内容紹介
「とんでもない子やな、君は。
ほんまもんの『ニケ』みたいや」
“勝利の女神”と同じ名を持つ少女が起こした、
あまりにもやさしい奇跡――
1995年、神戸市長田区。震災で両親を失った小学一年生の丹華(ニケ)は、兄の逸騎(イッキ)、妹の燦空(サンク)とともに、医師のゼロ先生こと佐元良是朗に助けられた。復興へと歩む町で、少しずつ絆を育んでいく四人を待ち受けていたのは、思いがけない出来事だった――。『楽園のカンヴァス』の著者が、絶望の先にある希望を温かく謳いあげる感動作。【解説/最相葉月】
版元ドットコムより
作家情報
原田マハ
1962 年東京都生まれ。関西学院大学文学部日本文学科、早稲田大学第二文学部美術史科卒業。伊藤忠商事株式会社、森ビル森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館勤務を経て、2002年フリーのキュレーター、カルチャーライターとなる。2005年『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞し、2006年作家デビュー。
(原田マハ公式ウェブサイトより)
読書感想
またもや大好きな作家さん、原田マハさんの作品。
選書が偏り過ぎなのは置いといて、一気読みしました。
この本は「積読」していた本のうちの一冊。
やっと手に取ったら、すぐにのめりこんで読み切ってしまいました。
話は阪神淡路大震災から10年間の物語。
震災で両親を失った少女とその兄弟が、縁もゆかりも無かった心療内科医の「おっちゃん」と新しい家族となり、苦労しながらも明るくたくましく成長していく。
東日本大震災にも言えることですが、目の前で突然両親を亡くした行き場を失った子どもたちは、心にどれほど大きな深い傷を抱えたんだろうとあらためて考えてしまいました。
話の中にも出てくる学校の同級生達の「かわいそう」という言葉。
家族を亡くした子とそうでない子の差が残酷なまでに学校生活に影を差します。
子供たちを取り巻く大人たちの言葉がそのまま子供たちに影響していると思うと、「子は親の鏡」とはこういうことかなあとしみじみ感じました。
瓦礫の下敷きになった奥様を、置き去りにせざるえなかったおっちゃんこと「ゼロ先生」はそのことで医師である息子さんから絶縁状態に。
物語後半、倒れた「ゼロ先生」と息子さんの縁を再度繋ぐべく頑張る主人公ニケとお兄ちゃん。
「お父ちゃんの手術したって下さい。」と息子さんに頼むニケ。
血のつながりを越えた本物の「家族」になった瞬間でした。
もう最後の方は号泣です。
電車の中で読んだので本当にヤバかった。
物語の中にはファンタジー要素もありますが、最後の方はそうきますか、と私はすんなり受け入れられました。
こういう家族の形も有り、ですね。
震災を題材にした作品は暗くなりがちですが、この作品は明るく前向きななれるような後味の良い内容なのでおすすめです。
でも、読む場所には注意を(笑)。