内容紹介
アメリカに生まれた少年・セドリックは、大好きな母や周囲の人々の細やかな愛情に包まれ幸せに暮らしていたが、名も知らぬ貴族の祖父の跡継ぎになるためイギリスへ渡ることとなった。祖父は意地悪で傲慢で、アメリカという国を嫌っていたが、セドリックの純真さに心動かされ、次第に変化していく。だがそこへ真の跡取りを名乗る者が現れて──。川端康成の名訳でよみがえる児童文学の傑作。
(版元ドットコムより)
作家情報
フランシス・ホジソン・バーネット
(1849-1924)英国マンチェスターの富裕な商人の家に生れるが、幼くして父を失い、家族とともに米国に移住。家計を助けるために作家活動を始める。次男をモデルにした『小公子』(1886)、続く『小公女』(1905)で成功をおさめ、『秘密の花園』(1911)で名声を不動のものにする。明治期の日本にも紹介され、現代に至るまで長く読まれている児童文学作家である。
(新潮社HPより)
読書感想
昔日曜日に放送されていたアニメ番組「世界名作劇場」の中で見た「小公子セディ」。
その原作となったこの「小公子」は130年以上の長い間、世界中で愛され続けてきたまさに不朽の名作です。
バーネットの別作品「小公女」は全体的に暗めで苦手なんですが、この「小公子」は、主人公セドリックと過ごすうちに、気難しい伯爵の頑なな心が緩やかに溶けていく過程が良かった。最後の方はおじいちゃん、ちゃんと自分のこれまでの行いを反省していて、変われば変わるものだとしみじみ感じました。
時間がたつに連れて、伯爵の笑顔が渋い笑いから本当の柔らかな笑みに変わります。
ずっと怒ってばかりだった裏には、一人ぼっちで寂しかった思いがありました。
かわいい孫と過ごすようになってやっと気づいた伯爵。
孫が可愛いという初めての感情にテンションがどんどん上がっていくのが読み進めるうちにわかって、思わずクスッと笑ってしまいました。
セドリックは姿も良く、心も立派。
伯爵に、自分が死んだらこの広い土地はお前のものだと言われても、
「おじいさま、それならぼく欲しくありません。おじいさまにいつまでも生きていてもらいたいんだもの。」
と言うセドリックがなんて可愛いことか!
いや、そんな可愛いこと言われたらおじいちゃんメロメロになりますよ。ほんと。
昔アニメで見た「小公女」は主人公に次々起こる試練が辛くて見るのをやめてしまいましたが、この「小公子」は大人になった今読むと、心穏やかになれる。
辛い試練は現実社会だけで十分。
純粋無垢で、おじいさまは優しいと信じて疑わない可愛いセドリックに是非癒されてください。
未読の方は是非。
ちなみにアニメ版のセディも可愛いのでおすすめです!