レモンと旅日和

40代おひとりさまの、旅と本と和の暮らし

スーツケースの半分は(近藤史恵)

スーツケースの半分は

書影元:版元ドットコム

内容紹介

 

あなたの旅に、幸多かれ

青いスーツケースが運ぶ"新しい私”との出会い。

心にふわっと風が吹く、温もりと幸せをつなぐ物語。

 

30歳を目前にした真美(まみ)は、フリーマーケットで青いスーツケースに一目惚(ひとめぼ)れし、憧(あこが)れのNYへの一人旅を決意する。

出発直前、ある記憶が蘇(よみがえ)り不安に襲われるが、鞄のポケットから見つけた一片のメッセージが背中を押してくれた。やがてその鞄は友人たちに手渡され、世界中を巡るうちに“幸運のスーツケース”と呼ばれるようになり……。

人生の新たな一歩にエールを贈る小説集。

 

祥伝社HPより

  

作家情報

 

近藤史恵(コンドウフミエ)

1969年、大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒。

93年、『凍える島』で第四回鮎川哲也賞を受賞しデビュー。

2008年に『サクリファイス』で第十回大藪春彦賞を受賞。



読書感想

 

表紙のスーツケースの青に惹かれて手に取った一冊です。

ひとり旅がしたくても今一歩勇気が出なかったときにちょうど見つけました。

この本は9話からなる連作短編集。

青いスーツケースが色々な人の手に渡り、世界中を旅する物語になっています。

仲良し女子4人組のリアルな人間関係。

みんなで話すと楽しいのに二人きりになると気まずい友人とか、わかる(笑)。

嫌いなわけでなく何かが合わない。

ああ、いたなあそんな人、とふと思い出したり。

旅の仕方もそれぞれ違ってておもしろい。

 

一話目の主人公、真美はひとり旅がしたことなくて、決断できない。

でも旦那さんに断られ、旅慣れてる友人につき合わせるのも気を遣う。

そんな時フリーマーケットで出会った青いスーツケース。

不思議に惹かれ、3000円で購入。

旦那さんに止められるも、真美は決断します。

 

行きたい場所には自分で行く。

 

 

たくましい友人たちは前向きなアドバイスをくれる一方、旦那さんは事あるごとに後ろ向きなことばかり言って引き留めようとしてくる。

奥さんが心配なのはわかるんですけどね。

喧嘩して落ち込んだ時にスーツケースの中から出てきた小さなメモ用紙。

 

「あなたの旅に、幸多かれ」

 

大雑把な友人ゆり香の「生きて帰ってきたら成功ってことにしよう」の言葉好きです。

笑っちゃうけど気が楽になる。

そのゆり香のお話、第3話「星は笑う」の好きなシーン。

自称旅慣れた男の余田と行ったアブダビで街に置き去りにされたゆり香。

もともとバックパッカーのゆり香のほうが旅の経験豊富なのが気に食わなかった、肝っ玉の小さい男の余田に読んでいて腹が立ちました。

が、ゆり香自力でさっさとホテルに帰り、別に見つけたホテルに移動します宣言。

 

「じゃあさようなら。もう電話しないでね。それから空港や飛行機内で出会っても無視して」

 

ゆり香かっこいい!

残りの時間を楽しむ気満々のゆり香がとても頼もしくて、なんだか笑っちゃう。

読後もスッキリ爽快です。

 

この作家さんの本は初めてですが、さっぱりしていて読みやすかったです。

旅の移動の合間とかに丁度良いと思いました。

この本はまさにジャケ買いでしたが、当たりました。

購入してよかったと思う一冊です。

旅のお供に是非どうぞ。