内容紹介
ほんとうにあった夢物語契約社員から女社長に――実話を基に描いたサクセス・ストーリー。琉球アイコム沖縄支店総務部勤務、28歳。純沖縄産のラム酒を造るという夢は叶うか!風の酒を造りたい!まじむの事業計画は南大東島のサトウキビを使って、島の中でアグリコール・ラムを造るというものだ。持ち前の体当たり精神で島に渡り、工場には飛行場の跡地を借り受け、伝説の醸造家を口説き落として――。
講談社BOOK倶楽部より
作家情報
原田マハ
1962 年東京都生まれ。関西学院大学文学部日本文学科、早稲田大学第二文学部美術史科卒業。ニューヨーク近代美術館勤務、フリーのキュレーターを経て、2005年『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞し、2006年作家デビュー。
読書感想
コロナ禍で国内でもなかなか遠出が難しい今だからこそ読みたくなる、沖縄が舞台の物語。
しかも実在する女性をモデルにしたサクセスストーリー。
そして原田マハとくれば面白くないわけがない!というわけで、はい、間違いないです。
そしてまた、読後のスッキリ感がいい。
期待を裏切りません。さすが原田マハ!
数年前に購入してから、何度も読み返しています。
コロナ前に沖縄行きたい熱が高まり、予約しようと思っていた矢先の今。
この本を読んでいると沖縄の情景が浮かぶようです。
沖縄行きたい・・・。
主人公の伊波まじむは派遣社員。
日々漠然と過ごしていた彼女は車内のベンチャー募集の告知に目を留める。
自分には関係ないー。
そう思いながらも最後の一文を読んだ瞬間、まじむは風を感じる。
『なお、本コンクールの参加対象者は、全社員です』
大きな事業を成し遂げたいわけではない。
実業家向きでもないまじむは、それでも心に決めたことがある。
純沖縄産のラム酒をこの世に生み出す。
風の酒を、造る。
そのために、自分の気持ちに嘘をつかずに進んで行くんだ、と。
信念をもって話すとおばあと約束したまじむ。
始めは社内でも無理だと蔑まれていたものの、つまづき、悩みながらまっすぐ突き進む彼女にもひとり、ふたりと味方が増えていきます。
もちろんその中でもおばあは最強の味方。
実在する桜坂劇場。
中にあるバーで二人が飲みながら話すシーンがよく出てくるので、私も行ってみたくなり、ネットで検索しちゃったり。
悩んで弱音を吐く孫の背中をたたきながら、さらっと光の道筋を照らすおばあ。
二人の関係が本当に素敵で、胸がほっこりするんです。
そして桜坂劇場内のカフェバーのバーテンダー吾郎さんの存在もこの物語のキーパーソン。
いい塩梅でいつも助けてくれます。
まじむの周りは人が温かい。
もちろん黙って人が集まるわけではなく、まじむ自身が駆けずり回った結果です。
最初はライバルだった先輩の冨美枝もなんやかんや憎めないキャラクター。めちゃめちゃ助けてくれる頼れる先輩。
私好きです。こういう人(笑)。
物語後半のプレゼンのシーン。
読んでいてワクワクする、大好きな場面です。
思い切ってやってみろと言ってくれる、こんな上司が欲しかった。
役員たちの言葉、笑い、そして最後の温かな拍手。
未読の方はぜひ。
そして、モデルとなったグレイスラムの金城さんのラム酒「コルコル」も沖縄で飲んでみたい。
本当にこの本を読むと、沖縄に、南大東島に行きたくなる。
アフターコロナは絶対行くぞ!沖縄!