内容紹介
月十万円で、心穏やかに楽しく暮らそう! ――キョウコは、お愛想と夜更かしの日々から解放されるため、有名広告代理店を四十五歳で早期退職し、都内のふるい安アパート「れんげ荘」に引っ越した。
そこには、六十歳すぎのおしゃれなクマガイさん、職業“旅人”という外国人好きのコナツさん・・・・・・と個性豊かな人々が暮らしていた。
不便さと闘いながら、鳥の声や草の匂いを知り、丁寧に入れたお茶を飲む贅沢さを知る。
ささやかな幸せを求める女性を描く長篇小説。
文庫本より
作家情報
群 ようこ
1954年東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。数回の転職を経て本の雑誌社に入社。デビュー作『午前零時の玄米パン』が評判となり作家業に専念。「無印物語」で人気を博す。『かもめ食堂』『れんげ荘』『三人暮らし』など著書多数。
読書感想
(ここだったら、まぎれて暮らせる)
45歳ではじめて実家を出ようと決めたキョウコがはじめて自分の意思で住む場所を決めた時に思ったこと。
「まぎれる」ってなんかわかるなあ。
キョウコの母親の人間性にイライラしました。
愚痴や文句が多く、見栄っ張りで自分の夫に無理に働かせて自分は専業主婦。
過労死させたくせに今度は「働きすぎ」と被害者気どり。
「お前のせいだろ!」とつっこんでしまいました(笑)。
自分がキョウコほどの高給取りならとっくに実家出てるだろうと思います。
いくら通勤に便利でも、この母親と絶対住みたくないし顔も合わせたくない。
でもキョウコは意志薄弱で流されやすいところも。
姪御さんの誕生日会とか正月帰るとか、自分で決めずに兄に言われるまま。
「まあなんとかなるか」と会いに行くことを決めるキョウコ。
なんだかんだいっても母親の顔を立てるため、きちんとした服装選びをしながら呟く。
「私、ちゃんとお母さんのいうこと聞く娘になってるじゃないの」
母親は思った通りキョウコにはきつい態度。
アパートに戻り「はー」と思わず溜息。
この溜息にもやもやを吐き出す思いとホームに帰ってきた安心感が込められているのかなと思いました。
しかし甥っ子姪っ子にも気を使わせてまで会う必要あるのかな。
この場合行かない方が周りのためじゃないかと自分に置き換えて考えてしまいます。
主人公の年代も近いのでいちいち身につまされるんですよね。この本。
母親との関係性は特に。
母親と娘ってやっぱり年齢を重ねるほど難しい部分があると改めて感じました。
アパートの住人はみんな個性的。
みんなそれぞれの事情があって、人生がある。
この本を読んでいると、血がつながらない他人だからこその温かな関係もあるような気がしてきます。
冬は部屋に雪が降り、夏は蚊の大群が押し寄せる。
そんな不便さと日々格闘し、折り合いをつけながら暮らすキョウコの「ま、いいことにしよう」というつぶやきがなんか好きです。
「これでいいのかな」と悩みながら、れんげ荘の暮らしの中で少しずつ今を受け入れていく主人公の緩やかな心の変化がじんわり伝わります。
キョウコのようなセミリタイアっていいな。
こういう小さな暮らし、憧れます。
月10万でやりくり今度やってみようかな。
このれんげ荘シリーズは他にも出ているので今度読んでみようと思います。