内容紹介
狙いはただひとつ。伊達政宗の馘(くび)――。
四百年の長きにわたり会津を治めながら、相次ぐ当主の早世で嫡流の男系が途絶えた芦名家。常陸の佐竹家より新たな当主として婿養子を迎えたものの、家中に軋轢が生じ、北からは伊達政宗の脅威が迫る。芦名家の行方は家臣筆頭の金上盛備の双肩にかかっており、ついに伊達との摺上原での最終決戦を迎えた。
東北の名家の存亡を描き、直木賞候補となった出色のデビュー作。
本屋が選ぶ時代小説大賞2017受賞!
版元ドットコムより
作家情報
佐藤 巖太郎
福島県福島市出身。会社員時代を経験後、2011年にオール讀物新人賞を受賞。
今作で第157回直木賞候補にノミネートされ、初の単行本デビュー。
読書感想
時代小説は読んだことがなく、読みやすそうな短編集を探していた時に同じ東北出身のこの作家さんを知りました。
この方は東日本大震災を福島で経験したそう。
その時のことを後のインタビューで、「当時は何も手につかず、でも何かを始めなくてはと思い小説を書き始めた」とおっしゃっていて、同じ震災経験者として興味がわき本を手に取りました。
この作品は6編の連作になっていて、1話ごとに語りてが変わり違う目線で話が進みます。
家臣や足軽など立場の違う男たちのそれぞれのエピソードや心情が別々の視点から描かれるのがおもしろいと思います。
戦国時代の会津が舞台ですが、合戦自体にはさほど触れず、大きく盛り上がる場面があるわけでもないので全体的に地味な印象。
人によっては途中で飽きるかも。
ただあえて無名の会津戦国武将芦名家を題材にするあたり作者の郷土愛を感じます。
人物描写はそこまで掘り下げられていませんが、短編なのでまあこれはこれでいいかな。
芦名家の滅亡までのカウントダウンが進むにつれて、男たちの葛藤や苦悩、心の変化はリアル。
直木賞選考委員の評は厳しめでしたが、50代の遅咲き新人作家のこれからへの期待も感じました。
私が6編の中で一番好きなのは「報復の仕来り」。
芦名家新参家老大繩の家臣を玄番が斬り、その証拠を探す新次郎の前に現場を目撃していた銀之助が証言者として現れる所から始まるお話。
本筋の芦名家滅亡とは外れているけど、ちょっとした意外性もあるし、手練れの玄番が討たれるシーンは気持ちがスッとしました。
6編全部が良いというわけでもないのですが、何作か良作が入っているので初単行本としては十分だと思います。
私のような時代小説初心者でもさくさく読める作品でした。
この作家さんの「将軍の子」も興味があるので、今度手に取ってみようと思っています。